教科書で解説 新聞記事 「旧優生保護法違憲判決~大阪」

こんばんは。わかたけスクールの佐藤正治です。

池上彰さんと佐藤優さんの著書「人生に必要な教養は中学校教科書ですべて身につく」によると現代社会を理解する為の基本的な知識、教養は中学校までの教科書をマスターするとほとんどの部分が網羅されるそうです。

それでは実際に新聞記事を読むときにどの程度教科書の知識が役に立つのかと言うことをしらべてみようというのがこの記事です。

今回は以下の記事を取り上げてみたいと思います。

旧優生保護法は「極めて非人道的」と違憲判断、強制不妊巡る賠償請求は棄却…大阪地裁
 優生保護法に基づく不妊手術を強制されたとして、障害を抱える近畿地方の男女3人が国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。林潤裁判長は、旧法が「極めて非人道的、差別的」と述べ、憲法違反と判断する一方、時間の経過で賠償請求権は失われたとして3人の請求を棄却した。原告側は控訴を検討している。

(読売新聞 12/1朝刊)

違憲の可能性のある優生保護法という法律

さて、このような現代の社会についての知識は公民で得られます。今回は東京書籍の「新しい社会 公民」を使って調べてみます。(以下、教科書のページはp○○と書いていきます)

まず、疑問に思うのは優生保護法というのは何かということではないでしょうか?

残念ながら教科書には優生保護法についての記載はないのでググってみましょう。
するとウィキペディアに優生保護法に関する記事がありました。

優生保護法(ゆうせいほごほう)とは、1948年(昭和23年)から1996年(平成8年)まで存在した、優生学的断種手術、中絶、避妊を合法化した法律である

ウィキペディア「優生保護法」

とあります。

※現在ではこの法律は改正され、母体保護法という法律になっていて現在は存在しません。だから「旧」優生保護法なわけです。

新聞記事で書いてある「不妊手術」というのはウィキペディアの記事の「優生学的断種手術」のことです。

法律名にもある「優生学」というのが重要そうです。

広辞苑で調べてみると優生とは

人類の遺伝的素質を改善することを目的とし、悪質の遺伝形質を淘汰し、優良なものを保存することを研究する学問

広辞苑第五版「優生学」

となっています。

つまり、優生保護法は
「障がいという悪い影響が子孫に遺伝しないように子供が作れないような手術をしたり、妊娠しても中絶できるようにした法律」
と言えます。

これは障がい者を差別した法律と言えます。

日本国憲法では基本的人権が保障されています

このような障がい者差別に関する問題も教科書には書かれています。
優生保護法そのものについては書かれていませんが、教科書48ページに、外国人、部落、男女、アイヌ民族に対する差別と一緒に平等権の問題として書かれています。

日本国憲法では13条と14条で基本的人権を保証することが書かれています。(P44) 

ですから、障がい者を差別するような法律は憲法に違反していると言えるわけです。

また、この優生保護法では不妊手術をするのに本人の同意を必要としていません。つまり行政側が一方的にこの人は不妊手術を受けるべきと決めて、手術を行うことができるのです。

子供を作るかどうかというのは個人の自由な意思に基づいて決定されるべきものです。ですから、これは自由権や幸福を追求する権利を侵していると言えます。

憲法では13条で「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされています。

つまりこの点においても優生保護法は憲法に違反していると言えるのです。

このような憲法に違反した法律は本来存在できません。(これを立憲主義と言います(p38))しかし、実際にはそのような法律が制定されてしまう場合もあります。

このような場合に備えて、憲法では裁判所が法律が憲法に違反している(違憲)かどうかを判断する権限を与えています。これを違憲立法審査制と言います。(p101)

裁判所と裁判の仕組

そこでこの記事にある近畿地方の男女3人は裁判所に
「憲法に違反した法律によって、自分たちは子供を作る権利を奪われたので、国にその損害を賠償して欲しい」
と訴えを起こしたのです。

裁判所には最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の五種類があります(p93)。利害の対立を裁く裁判のことを「民事裁判」と言います。その中でも特に今回のように相手が国や地方公共団体の場合「行政裁判」と言います(p94)

今回のように賠償金額が大きく、家庭内の問題ではない民事裁判はまず地方裁判所で裁判が行われます。このような最初の裁判を一審といいます。

今回の記事で書かれている裁判の結果はこの一審の結果になるわけです。

しかし、日本では裁判の結果をより慎重に扱うために、一審の結果が不服であれば、さらに上級の裁判所(今回の場合は高等裁判所)に対してもう一度裁判のやり直しを求めることができます(これを控訴と言います)さらにそれでも不服があれば最高裁判所に裁判をしてもらうように求めることができます(これを上告と言います)。このように最大3回裁判を受けられるようになっている制度を三審制といいます(p93)

実際、今回の裁判においても訴えを起こされた国はこの結果を不服として、控訴をする方針だと報じられています。

これまでの例からすると、今回のように新聞に報じられるような重大な違憲かどうかに関する裁判は最高裁までいくことが多いようです。

そのため、今回の裁判もこれで終わりではなく、結論が出るまではまだまだ時間がかかるのではないかと思います。

さらに最高裁まで行っても、明確な違憲かどうかの判断を避ける傾向があり、もっと積極的に違憲審査をするべきだという意見もあるそうです(P101)

自分の身を守るために裁判の仕組を知る

このように書くと、「どうせ自分は裁判になんて関係ない」思われるかもしれません。

しかし、実際には年間約15万件も民事裁判が起きています。

例えば、マルチ商法や訪問販売などの消費者関連のトラブルは誰のみにも起きる可能性はあります(P124)

また、いわゆるブラック企業などで過酷な労働環境で働かされている場合、それは法律で保証されている労働者としての権利が損なわれている可能性が高いのです(P132)

このような場合、泣き寝入りするのではなく、裁判を通じて自分の権利を主張し、自分の身を守ることもできるのです。

ですから、裁判の仕組を知っておくことは重要だと言えます。

もし東京書籍の教科書を持っていたら、参照のページを読んでみてくださいね。
※他の教科書も、同じような項目があるはずなので、ぜひ調べてみてください

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