埼玉県の高校入試制度について~公立高校の場合
あなたは埼玉県の高校入試制度についてご存知でしょうか?受験を経験した兄弟姉妹がいなかったり、他の都道府県から引っ越されてきた方の場合、入試制度がどうなっているのか分からない方も多いかと思います。
そこで今回と次回で埼玉県の入試制度の説明をしたいと思います。
高校の種類と入試制度
まず、高校にはどんな種類があるのでしょうか?
上図のように設立の母体で分けると以下の3つに大別できます。
- 公立高校
- 私立高校
- 国立高校
このうち、国立高校は筑波大付属坂戸高校、一校のみです。
また、公立高校は県立高校と市立高校に分けられます。
埼玉県の場合、公立志向が高く、公立高校を第一志望とし、すべり止めに私立高校を一校受けるというのが一番多いパターンです。
そこで、この記事では公立高校の入試制度について解説します。※私立については次回説明します。
公立高校の選抜方法
公立高校の選抜方法を簡単に言うと、
調査書(内申書)と学力検査(学力試験)の得点を合計し、点数順に並べて、高得点順に定員まで合格させる
というものです。
※高校によっては学力試験の他に、実技試験や面接の特典も含める場合もあります。
但し、調査書と学力検査(および実技と面接)の得点の割合は、高校ごとに異なっています。
どの高校がどのような得点の割合で選抜するのかについては、選抜基準として埼玉県のサイトで公開されています。
令和6年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における各高等学校の選抜基準
選抜の具体例
では、上尾高校の例で見てみましょう。
調査書と学力検査の得点の計算方法
まず見るところは「選抜資料」の項目です。
ここを見ると学力検査(入試)は500点満点、調査書(内申書)は320点満点だと言うことが分かります。
そのうち調査書の内訳は学習の記録(通知表)が180点、特別活動等の記録が120点、その他の項目が20点となっています。
さらに学習の記録は1,2年の通知表の成績はそのまま(それぞれ45点満点)、3年の通知表の成績は2倍(90点満点)で計算していることが分かります。
図にすると以下のようになります。
仮に次のような成績の受験生がいたとします。
- 学力検査:353点
- 調査書:
- 学習の記録 1年:31 2年:30 3年:30
- 特別活動等の記録:66 その他:11
この生徒の場合、単純な調査書の合計点は168点となります。
しかし、上尾高校の基準に則して計算すると3年の学習の記録の得点が30×2で60点となり、調査書の合計は198点となります。
この点数が選抜の際の基本点となります。
選抜方法
次に「一般募集」の項目を見てみると、3段階の選抜が行われることが分かります。
仮に150人の受験生がいて、100人が定員だとすると以下のように選抜が行われます。
一次選抜では、75人の合格者を決めます。
まず、調査書の合計点の満点を336点として調査書の点数を出します。
上記の生徒の場合、198×336/320=208点(端数四捨五入)となります。
これに学力検査の353点を足した、561点がこの生徒の総得点となります。
同様にすべての受験生も同じように総得点を計算して、得点順に並べ、上位75人が一次選抜での合格者となります。
二次選抜は残った75人に対して行われます。
今度は調査書の合計点の満点を218点として、調査書の点数を出し直します。
上記の生徒の場合、198×218/320=134点(端数四捨五入)となります。
これに学力検査の353点を足した、487点がこの生徒の二次選抜での総得点となります。
残った75人も同様に計算をして、改めて得点順に並べ、上位22人が二次選抜での合格者となります。
最後に残った53人に対して三次選抜が行われます。
残った53人をもう一度、一次選抜と同じ方法で総得点を出して、得点順に並べ替えます。そのうち一定の順位以上の生徒の中から、特別活動の記録の得点の良い順に3名選抜されます。
選抜の具体例
仮に以下の得点のA~Zの受験生の中から10名選抜するとします。(画像をクリックすると拡大されます)
選抜方法は上尾高校の基準に準じて、一次選抜では7名、二次選抜で2名、三次選抜で1名選ぶとします。
素の得点では以下のような順位だとします。
一次選抜
これを上記の一次選抜の基準に合わせて点数を換算し、点数順に並べ替えると以下のようになります。
(画像をクリックすると拡大されます)
この上位7名が一次選抜での合格者となります。
二次選抜
次に残りの受験生に対して二次選抜の基準に合わせて点数を換算し、点数順に並べると以下のようになります。
(画像をクリックすると拡大されます)
同様に上位2名が二次選抜の合格者となります。
三次選抜
最後に残りの受験生を一次選抜の基準に合わせて点数を換算し、点数順に並べ替えると以下のようになります。
(画像をクリックすると拡大されます)
仮に「一定の順位以上」を上位30%(5位以内)とすると、それに該当するのは水色の部分となります。この中で調査書の特別活動の点数が高いのは69点ですから、受験生Hが三次選抜の合格者となります。
これらを見て分かることは、1年生から努力するのが一番です。けれども多少1,2年の成績が悪くても、3年生になってからの頑張り次第で逆転することは十分可能であるということです。
学校によっては3年生の学習の記録の点数を3倍にするところもあります。
埼玉県の公立高校の場合、一度願書を提出した後、倍率を見て志望校を変更することも可能になっています。
そのため、私は次のように考えています。自分の実力に見合った第2志望、第3志望もしっかりと考えておく必要はあります。しかし最後の最後まで第一志望を諦めずに頑張ってほしいと。
「特別活動」「その他」は何が評価されるのか
何となくイメージがつかめてきたでしょうか。
調査書の「特別活動の記録」や「その他」の項目において何が評価されるのかが気になる方も多いかと思います。
こちらについては学校ごとに何が評価されるのかが異なっており、各校の選抜基準に記載されています。
例えば、上尾高校ならば以下のように記載されています。
特別活動の記録
- 学級活動・生徒会活動 以下の活動により得点を与える。
- 生徒会長、生徒会副会長、その他生徒会役員など。
- 各種委員会委員長、委員会副委員長。
- 学級委員長又はこれに準ずるもの。
- その他評価できるもの。
- 部活動 以下を目安として、レギュラー(該当する大会等に実際に出場した者)や登録メンバーとしての実績を評価し、得点を与える。なお、主催団体、予選の有無、大会規模等を考慮する。
- 運動部 全国大会、関東大会、県大会、郡市大会の出場等の成績により得点を与える。県選抜選手、部長等を評価する。
- 文化部 全国大会、関東大会、県大会、郡市大会の出場(出展)等の成績により得点を与える。部長等を評価する。
- 調査書の「5その他」欄に記載された活動のうち、運動部・文化部に準じて評価できるものに対して得点を与える。
その他の項目
- 資格取得等 以下の資格を取得している者に得点を与える。
英語検定3級以上、漢字検定3級以上、数学検定3級以上など。
先にも書いたように学校によってこの基準は異なるので、さらに厳しい基準の学校もあります。
例えば、大宮高校の場合、部活なら
- 運動部系・文化部系とも、全国大会等への出場・出展、関東大会等への出場・出展、県大会等への出場・出展など
検定ならば
- 英語検定2級以上、数学検定2級以上、漢字検定準1級以上など
と厳しい基準になっています
また、どの程度の結果を残せば、何点もらえるのかということが気になる方もいると思いますが、このような具体的な基準は書かれていません。
ただ私見ですが、
「この成績と自己採点結果でどう考えても受かるとは思わなかったのに合格した」とか
「この成績と自己採点結果ならまず間違いなく合格すると思ったのに不合格だった」ということを
それほど多く聞くことはないので、「特別活動の記録」や「その他」の点数に過大な期待をしたり過剰な心配をしないほうがよいと考えます。
最後に
複雑に思えるかもしれませんが、まとめれば以下のように言えます。
- 1年生の成績から影響があるので、できるだけ早く準備を始めるのに越したことはない。
- 但し、3年生の成績が2~3倍されたり、より入試での得点が重視される選抜基準もある。そのため最後まで諦める必要はない。
- 「特別活動の記録」「その他」の項目の点数はあまり気にしないほうが良い
次回は私立高校の入試制度を説明します。